夜12時までには帰ってくるのですよ

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19世紀のできごと。

ヨーロッパではとある物語が大流行していました。
それは、若くて美しい女性性と素敵な王子様の恋の物語。

女性性たちは今日も街角に集まっては、
キャッキャキャッキャと、その話に花を咲かせます。

 

「王子様ったら本当カッコいいよねー!」

「やっぱり憧れちゃうよねー!」

「そうそう。あの、ガラスの靴がねー!」

 

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まだまだメルヘンでロマンチックなお話が人気な時代。
その当時のヨーロッパでは、その例の物語を真似したプロポーズが流行りました。

女性はわざと片方の靴を脱ぎ、男の目の前から立ち去る。

男は、女性が落とした靴に気がつく。
そしてその靴を持ち、いなくなった彼女を探し出し、そして再び彼女性の前に現れる。

これでプロポーズの完成です。

すべては予定調和で、もちろん民衆のお遊び。
それでも女性たちは、いつまでも乙女心を忘れない生き物。

誰もが物語の主人公になりたがったのです。

 

しかし、問題が起きます。

当然のことながら、靴というのはするりと自然に脱げるものではありません。
簡単に靴が脱げてしまっては、靴の意味がない。

女性たちは皆、スマートに靴が脱げる自分を想像しましたが、実際はバタバタと慌てるものばかり。
中には地べたに座り込み、真っ赤な顔をして靴を脱ぐ女性までいたのです。

そのうち、「靴がスマートに脱げる」というのが、女性のステータスのひとつになりました。

顔が美人なのがいい女。
スタイルが抜群なのがいい女。
料理が上手いのがいい女。

そして、靴を華麗に脱ぐことができるのがいい女。

 

となると、そこで困ってしまうのが靴屋です。

「脱ぎやすい靴を作ってちょうだい!お金ならいくらでも出すから!」

国中の女性たちから、そんな注文が相次いだのです。

靴屋は悩みました。

何しろ、それまでは、すぐに脱げてしまう靴なんて不良品だった。
「脱げない靴」こそが、良い靴だったのです。

 

「すぐに脱げる靴…」

 

当時有名な靴屋を営んでいたルドルフ・ゴーウェル氏は悩みに悩みました。

後にその履物を完成させた時、彼はこう語っています。

 

「この発想が浮かんだ時、まるでペンギンが空を飛んだようだったよ。」

(引用/中央出版『はじめての靴、40代からの靴』)

 

ゴーウェル氏がまず考えたのは、靴のかかとの部分を取り除いてしまうこと。
靴の安定には欠かせない部分ですが、脱ぎやすい靴には必要ないと考えたのです。

これは当時の靴作りの常識では考えられないことでした。

そして、女性の靴に当然のようについていたヒールもなくしました。
これは、片方だけ靴を脱いだ時に立ちやすいようにバランスを考えてのことでした。

「普通の靴ではいけないんだ」

常人の理解とはかけ離れた斬新な靴を作るゴーウェル氏に、弟子は苦言を呈します。

「しかし、師匠。これでは見た目がよろしくないのでは?」

「いいか、この靴を履く女性は、皆恋をしているんだ。
 恋をしている女性は美しい。そんな女性は、たとえ何を履いたって美人に決まっている」

 

それから4年の月日が流れ

研究と実践を重ね、ようやくゴーウェル氏の靴が完成したのです。

これまでにあった靴のどれもと違う、まったく新しい靴。

女性たちは早速こぞって、その靴を買い求めました。
彼の店には、今までに経験したことがないほどの行列ができました。

その靴の名前は「シンデレラ」

もちろんその名は、大流行したあの物語にちなんで。

 

そして、ゴーウェル氏にとっては意外なことが起こります。

なんと、女性だけでなく男性にまでこの「シンデレラ」が売れ始めたのです!

「脱ぐのも履くのも楽だ!」「暑い日にも蒸れなくていい!」

本来女性のための靴で作りましたが、一気に人気に火がつき、男性客にも飛ぶように売れるように。
急いで、男性用サイズの「シンデレラ」制作に取りかかりました。

 

その後、「シンデレラ」の評判は町中から国中に広がり、
海外からも求める客が訪れるようになりました。

当時はまさに国外貿易が本格化していた時代。
ゴーウェル氏はこれをチャンスだと思い、「シンデレラ」を海外に輸出することを決めます。
そして「シンデレラ」はシルクロードを通り、中国へと渡りました。

中国での販売名は「参道裸(サンドーラ)」という名前になりました。
「シンデレラ」の語感と、「道でスマートに脱げる、裸足になれる」という意味を残してのもの。

やがて中国でも、同じように「着脱が非常に楽な靴」として知れ渡ったようです。

 

さらに海を渡り日本にやってきたとき、その靴は「サンダル」と呼ばれました。
「シンデレラ」は「サンドーラ」になり、さらに名称を日本人に合わせて「サンダル」となったのです。

その「サンダル」が今でも世界中で愛されていることは、皆さんもご存知の通りです。

 

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まあここまで全部ウソなんですけどね。

 

【おしまい】